ウェブ会議 価格の王道

ソフトバンクは、ポータルサイトやオークションなど、携帯電話サービスとの親和性が高いコンテンツを保有するため、FMCを兼ね備えた携帯電話事業により、自社経営資源の最大活用が可能となるのである。
一方でイーアクセスはソフトバンクとは異なり、多くの顧客基盤やコンテンツを自社では保有していない。 このため、MVNO(仮想移動体通信事業者)を通じて、ワンフォンタイプの移動データ通信サービスをユーザーに提供する形態を志向している。

この場合、FMCサービスはさまざまな業種の企業から提供されることになるため、前述のワンフォンにとどまらない多種多様なFMCサービスが提供されることが期待される。 これらの動きに対抗して、既存事業者もFMCサービス提供に向けた基盤作りを行っている。
Kは、通信事業分野でT電力グループと提携し、パワードコムとの合併を発表した。 これにより、安価な光アクセス網が確保可能となり、インフラ面でのFMCの競争力を増強した。
一方、Nも、自社で閉じずNグループ内の連携強化によるスケールメリットでの差別化を図るものと思われる。 この動きは、これまでグループ各社が別々に提供してきた公衆無線LANのインフラを、2005年7月に統合したことなどからもうかがうことができる。
S)現時点ではFMCサービスのメリットは未知数このように、FMCは通信サービスの中で、いま最も注目されているものの1つといえる。 しかし、FMCは期待こそ高まっているが、いまのところその効果は未知数である。
たとえば、ワンフォンのようなサービスは、ユーザーが安価さというメリットを享受することができる。 しかし、そのためには、ユーザーが携帯電話と固定通信の事業者をそろえたり、ワンフオン専用端末への機種変更や無線アクセスポイントの機器を購入して自宅に設置する、などの手間や費用負担が発生してしまう。
これらの障害や負担に対して、安価さを享受できるのが自宅内のみでは、ユーザーから見た場合の総合的な費用対効果は高くないとされる可能性は否定できない。 実際に、前述のKTの「ONEPhoNE」も、当初想定したほどにはユーザー獲得ができず、一部の先端ユーザーや宅内通話のヘビーユーザーのみの加入にとどまっている。
その原因としては、端末の種類が少ないこと、初期費用が高く大半のユーザーにとってはコストメリットが感じられないこと、当初予定していたアプリケーション融合サービスが十分実現できていないことなどがあげられる。 FMCサービス普及のためには、安価さ以外にFMCだからこそ実現できるサービスの提供が不可欠である。
安価さのみを提供したいのであれば、FMCサービスを用いずとも、単純に宅内エリアでの通話通信料金を割り引けば十分である。 特に、携帯電話事業者にとって、ワンフォンサービスを実施することは携帯電話の通話データ通信のトラフイック収入が固定網に逃げることで減収となってしまうので、より留意すべきである。
4)FMCサービスを成功させるために必要な視点。 FMCは、加入者数やARPUが伸び悩む携帯電話固定通信事業者にとって、新たな事業機会の必要性から有望視されているものであり、また固定通信網と携帯通信網融合の際の技術的、利用環境的な制約などから、事業者側の論理でサービス内容が検討されがちである。
しかし、FMCを新たな収益の柱として確立するためには、基本に立ち返ってユーザー視点で提供すべきサービスを考えることが必要である。 この視点で考えると、ワンフォンのような技術的に高度なサービスが必ずしもよいものであるとは限らない。

たとえば、FMCサービスを固定通信の観点から考えた場合、個人向けサービスではなく世帯向けサービスとしてとらえることもできる。 このようにとらえた場合、一部のユーザーに訴求する先端サービスよりは、老若男女問わず多くの生活者にメリットを与えられるものこそ有望ではないだろうか。
請求統合料金統合など付随サービス融合タイプのFMCサービスは、地味ではあるが世帯にとって利便性の高いサービスであり、重要であるといえる。 また、アプリケーション融合タイプのFMCサービスは、個人利用にとどまらず世帯や友人などのコミュニティで、PCや携帯電話など端末の形態やネットワーク環境を問わず、どこでもコンテンツを共有したり、コミュニケーションをより容易に実現することができるため、有望であると考えられる。
韓国の携帯電話市場動向。 1)MNPが市場にもたらしたもの。
韓国では、2004年1月1日からモバイルナンバーポータビリテイ(MNP)が導入された。 その導入スケジュールが、きわめてユニークであった。
韓国には、SKT、KTF、GTの携帯電話事業者3社が存在し、マーケットシェアはそれぞれ51%、32%、17%(2005年10月末時点)である。 財閥系のSKTが圧倒的なシェアを握っており、最下位のGTは常に苦戦を強いられている。
韓国情報通信部は、この3社体制を維持することが公正競争上不可欠であるという考えから、しばしば強烈な非対称規制を発動している。 たとえば携帯電話の販売インセンテイブ制度(代理店が携帯電話事業者からの販売奨励金を原資に携帯電話を安売りし、携帯電話事業者は獲得したユーザーの月ーの利用料を原資に販売奨励金を回収するしくみ)を法律で禁止した。
著者が知る限り、法律で禁止している国は、韓国とフィンランド以外には存在しない。 禁止した理由は、携帯電話事業者間の公正競争の確保といいつつ、携帯電話の安売り合戦になると最も不利になるGTを守るためであった。
MNPについても、非対称的な導入が行われた。 まず、2004年1月1日からはSKTのユーザーだけがMNPを利用でき、半年後にKTF、さらにその半年後にGTのユーザーがMNPを利用できるようにした。
その結果、当然のことながら、第1フェーズではSKTから、KTFとGTにユーザーが流れた。 特にKTFは親会社のKT(韓国通信)とともに、グループをあげて人的プッシュ販売を行った(要は社員が家族や友人、知人などに営業した)ことで、シェアを伸ばすことに成功した。

第2フェーズが始まる頃には、事業者間の販売競争がいよいよ加熱し、禁止されていた販売インセンテイブも復活、ゼロウォン端末も出現した。 結局3社とも販売停止処分および罰金の支払いを当局から命じられるとともに、過度な競争を慎むよう指導された。
第2フェーズでは、逆にKTFユーザーが、SKTとGTに流れ、第3フェーズではGTユーザーが流出。 結局、マーケットシェアはMNP開始前とほとんど変わらない状態に戻った。
この韓国のMNP騒ぎで得をしたのは、端末メーカーと販売代理店とユーザーであり、損をしたのはマーケティングコストがのしかかり、利益率が大きく低下した携帯電話事業者だけだったといえよう。 ただし、MNP導入前までは、ほぼ飽和したと考えられていた携帯電話契約数が、MNP導入後、再び増加基調に転じたことは、業界全体にとってプラスであった。

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